歳を重ねると夫婦関係も色々な形があります。そして、セックスレスにも原因は様々で気持ちだけでは解決できない「病気」が原因の場合もあります。長い時間を一緒に過ごしてきた良い関係だからこそ、セックスが出来ない苦しみや、その穴を埋める「何か」が必要な時があるのです。今回の報告者の男性は、セックスが出来ない対処法として行き着いた行動を赤裸々にまとめてくれています。結果として今も尚、奥様とよい関係を築いているという最後はほっこりする体験談です。
妻との出会いは結婚相談所
私と妻との出会いは結婚相談所。今から17年前の事です。
会った瞬間というのも変ですが、「あっ、俺はこの人と結婚するかも?」という漠然とした気持ちが起きたのを今でも覚えています。
それまでに何人かの女性とお見合いをしていましたが、イマイチこれといったインパクトのある女性はいませんでした。
でも妻は違いました。
話しのネタは泉のように出て来たし、また彼女もそういった私の話によく笑い、真剣に対応し、とにかく時間が経つのがあっという間。何を話していいのか、なんてことはこれっぽっちも考える必要のない人でした。
そんな妻でしたから、デート3回目でプロポーズし、承諾を得てその半年後には晴れて結婚。本当に私の人生で唯一無二の女性との「出逢い」だったのです。
妻に乳がん発覚しセックスレスに
結婚後も二人の仲は自分で言うのもなんですが、ラブラブです。毎日、ハグ&キスで仕事に行き、夫婦生活も週に2回から3回は当たり前。
子どもは欲しかったけれど、できずにいたのでお互いの親からはせがまれたことは何度かあり、多少のストレスを感じたこともありましたが、おおむね潤風満帆でした。
そんな二人の関係にセックスレスなんてありえないと思っていました。あの出来事があるまでは...。
それは突然の事でした。
夫婦の営みをしていた時、ふと変化を感じた右胸のしこり。小豆くらいの大きさの固いものを妻の右胸に感じたのです。不安に感じて妻の姉が受診したことのある乳腺科のクリニックで診てもらうと、結果は「乳がん」でした。
ステージⅢ。
その先生は私たちの住むエリアでは一番大きな大学病院の乳腺科の担当医もしていたので、その場で紹介状を書いてもらい、妻は即入院そして手術し右胸乳房を全摘出、そして化学療法、放射線療法と立て続けに乳がんとの闘いを強いられました。
当面の命の危険は去りましたが、最後に妻が行った治療がホルモン療法。これを彼女は10年継続しています。そして、そのホルモン療法を行うことで起きた副作用が「濡れない体」になったこと。
乳がん発症以来、10年私たちはセックスをしていません。
体のスキンシップを時々したりしますが、妻のほうはあまり夫婦の営みについて興味を抱かなくなってしまったのです。
一方で私のほうはと言えば、元々性欲の強いだったこともあって妻とのセックスができないことはかなりの苦痛でもありました。そして、その対処法として私が選んだ道というか手段は「自らも女性の立場になり、性欲を処理する」でした。
具体的には女性の下着を身に着けて自分を慰める。
元々、男性ですから女性の下着への興味はありましたし、妻にもセクシーな下着をプレゼントしたことは何度もあり、その下着を着けてもらってのセックスはいつも以上に興奮したのを覚えています。
その私が自ら女性の下着を着けて自分を慰めるなんて!
どうしてそういった心理に傾いていったのか、自分でもよくわかりません。
でも、もう妻とは身体の関係をもつことができない、そう思った時、自分の中の何かが変わった、そう思うしかありませんでした。
ブラジャーやパンティなどかなりの枚数を揃え、その時々に身に着けて自分を慰めていたのです。そしてその後は普段から女性の下着を身に着けて生活をするようにまでなってしまったのです。
仕事に行く時も身に着けてでかけるのです。
異常な心理、行動であることは自分でもよくわかっています。でも、もうやめることはできませんでした。
当然ながら妻には内緒、絶対にわかってはいけない行為です。
偶然の出来事から妻にバレてしまい…
こんな私の心理を思い切って妻にカミングアウトしてしまうか、いつも心の中での葛藤がありました。
そして、告白をするきっかけとなったことが起きたのです。
私は女性の下着の洗濯は入浴中に行なっていて、洗った下着類を洗濯槽に隠し、翌朝妻の目を盗んで出勤用に使っている車の中に移すのが日課でした。
ところが、うっかり洗濯槽に入れていたのを忘れてしまい、妻に下着類を見られてしまったのです。
もう観念するしかありません。
妻の言った最初の言葉は私への陳謝でした。
「私がこんな体になってしまったからあなたがそういう行動をとるようになってしまった。すべて私のせいね」
涙を流しながら妻は言いました。
私はなんと答えたらいいかわかりませんでした。
「でも!」と腹をくくりつつ私は妻に訴えました。
「これが今の自分でありも正直な気持ち。女性の下着を身に着けることをやめることはできない」
「認めてくれとは言わない、でも叶うなら、このまま君とずっと暮らしていきたい気持ちに変わりはない」と。
そして妻は承諾をしてくれたのです。
「自分の思うように生きて下さい。そして今まで私のことをいたわってくれて本当にありがとう」
「私はあなたとの出逢いを神様がくれたギフトと思っているから、ずっと一緒に仲良く暮らしたいの」
そう言い、笑顔を見せてくれたのです。
思わぬ展開に私自身が驚いたのは当然のことでした。
そして…妻の理解のおかげで
私は今、妻に女性の下着についていろいろアドバイスを得ながら新しい下着を買うようにしています。そして、その際には妻に同行してもらい、一緒に購入をするようにしています。
女性の下着を身に付けていること以外、夫婦仲も変わらずいいし、妻への愛情も結婚して以来、変わりません。セックスはできないけれど、ボディタッチも今まで以上に行なうようになりました。お互いに齢はとってきましたが、愛情は絶えることはなく、過ごしています。
夫婦にもいろいろなスタイルが在る
こんなセックスレス体験、思いっきりひいてしまう人もいると思います。私たちのような関係を持つ夫婦はそうざらにはいないでしょう。でも、これも一つのスタイルです。
私みたいな心理や感情にならないでも自分やあるいは連れ添う人にアクシデントが起こってセックスができなくなるパターンは人それぞれ違うものがあると思います。要は受け入れる勇気とその後どうするか、だと思います。
セックスっていやらしいものと捉えがちですが、とても大切な行為だと思います。子どもを産むための行為でもあるし、愛する者同士がとる最高のコミュニケーションだとも思うからです。
どうか自分の気持ちを大切に、まずは一歩前に歩んでみて下さい。そうすれば何かが変わるかもしれないし、壊れるかもしれない。
でも、「変化」はある。
そして、それがどんな関係の仲でもお互いが結果としていい方向に行くことを願っています。